過去の実務経験に基づき、類例を作成してみました。簡潔に記載しています。
類型は基本の更地です。 |
1.対象不動産
所在地:A市B町100-1
地目:宅地
地積:2,000㎡(登記簿)
2.鑑定評価によって求める価格の種類
正常価格
3.その他条件
なし
4.価格時点
平成21年4月1日
※四角で括った部分は、近隣地域の範囲です。
資料1.対象不動産及び取引事例の概要
符号 |
時点 |
類型 |
価格等 |
数量 |
形状 |
利用現況 |
街路条件 |
行政条件 |
その他 |
対象地 |
21.4.1 |
更地 |
― |
2,000㎡ |
不整形 |
一般住宅地域 |
6m市道 |
1中専
(60/200) |
事情無 |
公示地 |
21.1.1 |
更地 |
105,000円/㎡ |
280㎡ |
整形 |
同上
|
同上 |
1住居
(60/200) |
同上 |
事例A |
20.6.1 |
更地 |
115,000円/㎡ |
300㎡ |
整形 |
同上 |
同上 |
同上 |
同上 |
事例B |
20.2.1 |
更地 |
83,000円/㎡ |
500㎡ |
袋地 |
同上 |
同上 |
同上 |
事情無
※1 |
事例C |
20.8.1 |
更地 |
112,000円/㎡ |
250㎡ |
整形 |
同上 |
同上 |
1中専
(60/200) |
事情無 |
※1路地状部分(間口約4m×長さ約20m)
有効宅地部分(約30m×約14m)
資料2.地域要因及び個別的要因
地域 |
近隣地域 |
類似地域 |
事例・項目 |
対象地 |
事例C |
事例A |
事例B |
公示地 |
地域要因 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
個別的要因 |
※1
63 |
100 |
※2
104 |
※3
76 |
100 |
※1内訳
二方路
1.01
規模過大0.80
間口狭小0.80
形状 0.98
※2内訳
方位 1.04(住宅地は、快適性を重視するため方位を考慮します)
※3内訳
①方位 1.02
②袋地 ①減価率査定
有効宅地部分 30m×14m=420㎡
路地状部分 4m×20m=80㎡
合計 420㎡+80㎡=500㎡
②評点
有効宅地部分-20%
路地状部分 -30%
③減価率
420㎡×(1-0.2)+80㎡×(1-0.3)≒0.78
500㎡
③規模過大 0.95
資料3.近隣地域の賃貸条件
共同住宅
●1,2F月額支払賃料1,500円/㎡ 敷金3,000円/㎡
●必要諸経費等:総収益の約28%
資料4.標準画地に想定した建物の概要
●共同住宅木造2階建 延床面積200㎡
●価格時点の経済的残存耐用年数
主体部分:25年
付帯部分:15年
●建築費:130,000円/㎡ 建築工期0.5年
資料5.対象地の開発計画
①総面積 2,000㎡
②公共潰地 400㎡
③有効面積 1,600㎡
④分譲総区画数 6区画
⑤分譲単価 109,000円/㎡
⑥宅地造成工事費 7,000円/㎡
⑦販売費及び一般管理費 分譲収入の10%
⑧投下資本利益率 年12%
(開発スケジュール)
▲:支出時点
△:収入時点
<開発想定図>
資料6.還元利回り等
①基本利率:年5.0%
②賃料の変動率:年0.5%
③未収入期間に対する修正率:0.9678
④一時金の運用利回り:年2.0%
⑤元利逓増償還率:躯体割合90%×0.0676+設備割合10%×0.0934≒0.070 7.0%
■鑑定評価額決定理由の要旨
※価格形成要因の分析、同一需給圏の範囲、市場分析等省略
1.鑑定評価方式の適用
取引事例比較法、収益還元法、開発法を適用する。なお、原価法は対象地が既成市街地に存し、再調達原 価を把握できないため適用しない。
標準画地方式
(1)取引事例比較法(時点修正変動率:年間-2.0%と査定)
事例適格4要件を具備したA,B,Cを採用。
事情補正 時点修正
標準化補正 地域格差
①事例A 115,000円/㎡ × 100/100 × 98.3/100 × 100/104 × 100/100
≒ 109,000円/㎡
②事例B 83,000円/㎡ × 100/100 × 97.7/100 × 100/ 76 × 100/100
≒ 107,000円/㎡
③事例C 112,000円/㎡ × 100/100 × 98.7/100 × 100/100 ≒ 111,000円/㎡
④比準価格
開差は僅少であるため、中庸値を採用して109,000円/㎡と決定。
上記個別格差を乗じて下記のとおり決定。
109,000円/㎡×0.63≒68,700円/㎡
(2)収益還元法(土地残余法)
標準画地上に最有効使用の建物を想定し、純収益を還元利回りで還元して、直接的に求める。
A.総収益
①年額支払賃料
1,500円/㎡×200㎡=300,000円
300,000円×12か月=3,600,000円
②敷金の運用益
3,000円/㎡×200㎡=600,000円
600,000円×0.02=12,000円
③年額正常実質賃料
①+②=3,612,000円
B.総費用
3,612,000円×0.28≒1,010,000円
C.純収益
A-B≒2,600,000円
①想定建物帰属純収益
○建物初期投資額
120,000円/㎡×200㎡=24,000,000円
24,000,000円×0.070=1,680,000円
②土地帰属純収益
2,600,000円-1,680,000円=920,000円
○未収入期間を考慮
920,000円×0.9678≒890,000円
D.還元利回り
5.0%-0.5%=4.5%
E.土地残余法による収益価格
890,000円÷0.045≒19,800,000円
19,800,000円÷250㎡=79,200円/㎡
上記個別格差を乗じて以下のとおり査定。
79,200円/㎡×0.63≒49,900円/㎡
(3)開発j法
価格時点における区画割りを想定。
①分譲収入
分譲単価:105,000円/㎡(6画地平均)
105,000円/㎡×1,600㎡=168,000,000円
②分譲費用
1.宅地造成工事費 12,000円/㎡×2,000m=24,000,000円
2.販売費及び一般管理費 24,000,000円×0.1=2,400,000円
③投下資本収益率 年12%
④開発法による価格
項目 |
金額(円) |
割合(%) |
月数 |
複利現価率 |
複利現価(円) |
収入 |
84,000,000 |
50% |
3 |
0.9721 |
81,656,400 |
|
84,000,000 |
50% |
6 |
0.9449 |
79,371,600 |
計 |
|
|
|
A |
161,028,000 |
支出 |
|
|
|
|
|
造成工事費 |
12,000,000 |
50% |
2 |
0.9813 |
11,775,600 |
|
12,000,000 |
50% |
3 |
0.9721 |
11,665,200 |
販管費 |
1,200,000 |
50% |
3 |
0.9721 |
1,166,520 |
|
1,200,000 |
50% |
6 |
0.9449 |
1,133,880 |
計 |
|
|
|
B |
25,741,200 |
A-B ≒ 135,300,000円
135,300,000円 ÷ 2,000㎡ = 67,600円/㎡
(4)公示価格を規準とした価格
時点修正 標準化補正 地域格差
公示地 105,000円/㎡ × 99.5/100 × 100/100 × 100/100 ≒ 104,000円/㎡
よって上記個別格差を乗じて以下のとおり査定。
104,000円/㎡×0.63≒65,500円/㎡
2.試算価格の調整と鑑定評価額の決定
(再吟味、説得力に係る判断は省略)
以上により、次の3価格を得た。
比準価格 68,700円/㎡
収益価格 49,900円/㎡
開発法による価格 67,600円/㎡
比準価格は、実証的かつ客観的価格で、最も規範性高い。
収益価格は、最も理論的価格であるが、賃料の遅行性の性格から、他の試算価格より低位に得られるのが通常である。
開発法による価格は、開発業者の投資採算性に着目した価格であるが、想定要素を含むため精度劣る。
よって、比準価格を採用し、他の価格による検証を行い、鑑定評価額を㎡当たり68,700円、総額137,400,000円と決定した。なお、この価格は、公示価格との均衡を得ており妥当である。
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