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平成20年不動産鑑定士試験短答式試験問題 |
[問題1]区分地上権の鑑定評価に関する次のイからホまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
イ 区分地上権の鑑定評価額は、土地残余法に準じて求めた収益価格及び区分地上権の立体利用率により求めた価格を関連づけて得た価格を標準とし、設定事例等に基づく比準価格及び区分地上権の設定事例等に基づく区分地上権割合により求めた価格を比較考量して決定するものとする。
ロ 土地残余法に準じて求める収益価格は、区分地上権設定地について、当該区分地上権設定後の状態を所与として最有効使用を想定して求めた当該設定地に帰属する純収益を還元利回りで還元して得た額について、当該区分地上権の契約内容による修正を行って求めるものとする。
ハ 区分地上権の立体利用率により求める価格は、区分地上権設定地の更地としての価格に、最有効使用を想定して求めた当該区分地上権設定地全体の立体利用率を基準として求めた当該区分地上権に係る立体利用率を乗じて得た額について、当該区分地上権の契約内容等による修正を行って求めるものとする。
二 設定事例に基づく比準価格を求める際、区分地上権の経済価値には、当該区分地上権に係る工作物の保全のため必要な他の空間に関する使用制限に係る経済価値を含むことがあるが、こうした使用制限に係る内容については考慮外とすべきである。
ホ 区分地上権の設定事例等に基づく区分地上権割合により求める価格は、近隣地域及び同一需給圏内の類似地域等において設定形態が類似している区分地上権の設定事例等を収集して、適切な事例を選択し、これらに係る設定時又は譲渡時における区分地上権の価格が区分地上権設地の更地としての価格に占める割合をそれぞれ求め、これらを総合的に比較考量の上適正な割合を判定し、価格時点における当該区分地上権設定地の更地としてのか価格にその割合を乗じて求めるものとする。
(1)1つ
(2)2つ
(3)3つ
(4)4つ
(5)すべて正しい
[問題2] A駅から北方へ約1km離れた住宅地域に存し、指定建ぺい率50%、指定容積率100%、第1種低層住居専用地域にある幅員約4mの道路のみに接面する長方形の100㎡の更地の鑑定評価を依頼された。当該地域の標準的使用及び当該敷地の最有効使用を戸建住宅と判断した場合、取引事例比較法において選択すべき取引事例に関する次の記述のうち、誤っているもはどれか。
(1) 近隣地域に隣接し、指定建ぺい率80%、指定容積率200%、近隣商業地域にある、敷地規模100㎡、敷地の形状が長方形、幅員約8mの道路に接面する敷地上に建築された新築の4階建の1階が店舗、2階以上が住宅である建物及びその敷地の取引事例について、当該地域の標準的使用及び当該敷地の最有効使用を中層の店舗付共同住宅であると判断した。この場合、必要やむを得ない場合を除いて、取引事例比較法において代替、競争等の関係を有する取引事例として選択することは、一般的に妥当ではない。
(2) A駅の隣のB駅から北方へ約1km離れた住宅地域に存する指定建ぺい率50%、指定容積率100%、第1種低層住居専用地域にある、敷地規模120㎡、敷地の形状が長方形、幅員約5mの道路に接面する新築の戸建住宅及びその敷地の取引事例について、当該地域の標準的使用及び当該敷地の最有効使用を戸建住宅地域と判断した。この場合当該取引事例に配分法を適用することは、一般的には妥当である。
(3) A駅から北方約50mにあって、指定建ぺい率80%、指定容積率300%の近隣商業地域にある、敷地規模100㎡、敷地の形状が台形、幅員約6mの道路に接面する1階店舗、2及び3階が事務所として利用されている店舗兼事務所及びその敷地の取引事例について、当該地域の標準的使用及び当該敷地の最有効使用を3階建の店舗兼事務所と判断したので、取引事例として選択することは、一般的に妥当ではない。
(4) A駅から北方約2kmにあって、飲食店、ガソリンスタンド、営業所等が連たんする幅員約20mの幹線道路沿いにある、指定建ぺい率60%、指定容積率200%、準住居地域、規模500㎡、敷地の形状が正方形の築後約50年を経過した戸建住宅及びその敷地について、当該地域の標準的使用及び当該敷地の最有効使用を路線商業地域として利用することであると判断した。しかし、現に戸建住宅として利用されているので、取引事例として選択することは、一般的には妥当である。
(5) A駅から北方約1kmにあって、指定建ぺい率60%、指定容積率200%、準工業地域にある、敷地規模100㎡、敷地の形状が長方形、幅員約4mの道路に接面する更地の取引事例について、当該地域の標準的使用及び当該敷地の最有効使用を戸建住宅と判断したので、取引事例として選択することは、一般的には妥当である。
[問題3] 事例資料の収集及び選択に関する次のイからへまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
イ 事例資料とは、鑑定評価の手法の適用に必要とされる現実の取引価格、賃料等に関する資料をいう。
ロ 賃貸借の事例資料を収集及び選択する場合には、賃貸借の契約内容についても調べる必要がある。
ハ 価格時点に近い事例資料を収集及び選択すべきであり、過去の事例資料については、収集する必要はない。
二 隣接地の買収の事例資料は、地域の価格水準より乖離したものが多いので、収集及び選択する必要はない。
ホ 鑑定評価先例価格は、事例資料ではないので参考資料とすることはできない。
へ 借地権の事例資料を収集及び選択する場合には、借地の範囲等の登記簿に記載されていないものについても調べる必要がある。
(1)2つ
(2)3つ
(3)4つ
(4)5つ
(5)正しいものはない
[問題4] 最有効使用に関する次のイからホまで記述のうち、正しいものはいくつあるか。
イ 最有効使用は将来相当の期間にわたって持続し得る使用方法でなければならないため、3年間は駐車場として使用し、その後、低層店舗敷地とすることが最大限の効用を発揮すると判断できるような場合において、当該使用方法は最有効使用とはなりえない。
ロ 資産の流動化に関する法律に基づき資産流動化計画により対象不動産の運用方法が決められている証券化対象不動産の取得時においては、必ずしも最有効使用を前提とせず、その運用方法を前提に投資採算価値を求める必要がある。
ハ 住宅地域に存する地積200㎡の整形な一方路画地について、戸建住宅を想定して求めた収益価格が150,000円/㎡、共同住宅を想定して求めた収益価格が200,000円/㎡であった。行政的条件から土地の分割は認められておらず、地域分析等から戸建住宅と共同住宅以外の利用方法は考えられていない場合、当該土地の最有効使用は共同住宅となる。
二 定期借地権の設定により対象不動産の利用方法が長期にわたって決められている場合、当該土地の継続賃料の算定に当たっては、当該土地の最有効使用の判定は不要である。
ホ 敷地規模100㎡程度の戸建住宅を中心として構成される近隣地域内にあって、地積3,000㎡の土地の最有効使用を中層のマンション敷地として判断する場合、その需要者は法人である不動産開発業者となり、近隣地域内の標準的使用である戸建住宅とは市場参加者の観点から相互に競合関係をもたない市場を形成しており、対象不動産の価格形成が近隣地域の影響から独立している場合の一例となる。
(1)1つ
(2)2つ
(3)3つ
(4)4つ
(5)すべて誤っている
[問題5]鑑定評価の各手法の適用に当たって必要な事例に関する次のイからホまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
イ 現実に成立した取引事例には、不動産市場の特性、取引等における当事者双方の能力の多様性と特別の動機により売り急ぎ、買い進み等が存在するのが通常であるが、取引内容の守秘義務が取引当事者にあるため、取引事例がどのような条件の下で成立したものであるかを調査しなくてもよい。
ロ 近隣地域又は同一需給圏内の類似地域若しくは必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺の地域に存する不動産は、収益還元法の適用に当たって必要な収益事例としては適切であるが、原価法の適用に当たって必要な建設事例としては適切でない。
ハ 収益還元法の適用に当たって必要な収益事例が特殊な事情を含むものである場合、当該事例を鑑定評価に利用できない。
二 対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等における同一需給圏内に存し対象不動産と代替、競争等の関係が成立していると認められる不動産は、取引事例比較法の適用に当たって必要な取引事例としては適切であるが、収益還元法の適用に当たって必要な収益事例としては適切ではない。
ホ 取引事例に係る取引における特殊な事情とは、一般に、将来、他に転売することより差益を得ることを目的とした取引のことをいう。
(1)1つ
(2)2つ
(3)3つ
(4)4つ
(5)すべて誤っている
[問題6]建物及びその敷地の継続賃料の鑑定評価に当たって、次のケースで利回り法を適用した場合の試算賃料として正しいものはどれか。
なお、ここでの試算賃料は年額実質賃料を求めるものとし、現行賃料を定めた時点から価格時点までに、土地価格、建物価格、基礎価格、公租公課はいずれも10%上昇しているが、必要諸経費等の合計額には変動がないものとする。また、価格時点における継続賃料利回りは、現行賃料を定めた時点における継続賃料利回りに対して5%逓減している。
(現行賃料を定めた時点における土地価格等)
土地価格 1.2億円
建物価格 1.2億円
基礎価格 2億円
年額実際実質賃料 1,000万円
公租公課 200万円
純賃料 600万円
(1)847万円
(2)1,027万円
(3)1,038万円
(4)1,045万円
(5)1,060万円
[問題7]開発法に関する次のイからホまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
イ 開発法を適用する際、地域分析及び個別分析に基づいて、対象不動産にマンション等を建築し、一体として利用することが合理的と判断される場合と標準的な宅地規模に区画割りし、分割して利用することが合理的と認められる場合がある。
ロ 開発法によって求める価格は、マンション等又は細区分した宅地の販売総額を価格時点に割り戻した額から建物の建築費及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用又は土地の造成費及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を価格時点に割り戻した額をそれぞれ控除して求めるものとする。
ハ マンションとして一体利用をすることが対象不動産の最有効使用であると判断した場合、開発法を適用して求めた価格は想定要因が多いので、更地の鑑定評価額を求めるに当たって、比較考量するものとされている。
二 マンション等の敷地は一般に法令上許容される容積の如何によって土地価格がことなるので、敷地の形状、建築基準法等に適合した建物の概略設計等に関する開発計画を想定し、これに応じた事業実施計画を策定することが必要である。
ホ 市街化区域かつ宅地地域に存するものの、現に耕作の用に供されている土地の鑑定評価に当たっては、開発法を適用することはない。
(1)1つ
(2)2つ
(3)3つ
(4)4つ
(5)すべて正しい
[問題8]収益還元法に関する次のイからホまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
イ 土地残余法を適用するに当たっての建物等が、必ず新築でなければならないのは、建物等が古い場合には複合不動産の生み出す純収益から土地に帰属する純収益が的確に求められないことが多いからである。
ロ 直接還元法における純収益は、対象不動産の初年度の純収益を採用する場合と標準化された純収益を採用する場合があることに留意しなければならない。DCF法の適用に当たっては、初年度の純収益及び復帰価格並びにその発生時期が明示されることから、純収益の見通しについて十分な調査を行うことが必要である。
ハ 割引率は、直接還元法の収益価格及びDCF法の復帰価格の算定において、ある将来時点の収益を現在時点の価値に割り戻す際に使用される率であり、還元利回りに含まれる変動率と予測に伴う不確実性のうち、収益見通しにおいて考慮された連続する複数の期間に発生する純収益や復帰価格の変動予測に係るものを除くものである。
二 有期還元法は、不動産が敷地と建物等との結合により構成されている場合において、その収益価格を、不動産賃貸又は賃貸以外の事業の用に供する不動産経営に基づく焼却後の純収益に割引率と有限の収益期間とを基礎とした複利年金現価率を乗じて求める方法である。
ホ 土地残用法における建物等に帰属する純収益の把握に当たっては、建物等の価格は、収益還元法以外の手法によって求める必要がある。
(1)1つ
(2)2つ
(3)3つ
(4)4つ
(5)すべて誤っている
[問題9]鑑定評価報告書に記載する事項に関する次のイからホまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
イ 正常価格又は正常賃料を求めることができる不動産について、依頼目的及び条件により限定価格、特定価格又は限定賃料を求めた場合は、かっこ書きで正常価格又は正常賃料である旨を付記してそれらの額を併記しなければならない。
ロ 支払賃料の鑑定評価を依頼された場合のおける鑑定評価額の記載は、実質賃料である旨を付記して支払賃料の額を併記するものとする。
ハ 鑑定評価の依頼目的及び条件と価格又は賃料の種類との関連について、鑑定評価の依頼目的及び条件に応じ、当該価格を求めるべきと判断した理由を記載しなければならず、特に、特殊価格を求めた場合には法令等による社会的要請の根拠について明らかにしなければならない。
二 価格時点及び鑑定評価を行った年月日とともに、実際に現地に赴き対象不動産の現況を確認した年月日(実査日)をあわせて記載しなければならない。
ホ 対象不動産の確認、資料の検討及び価格形成要因の分析等、鑑定評価の手順の各段階において、鑑定評価における資料収集の限界、資料の不備等によって明らかにすることができない事項が存する場合の評価上の取扱いを明示する必要がある。
(1)1つ
(2)2つ
(3)3つ
(4)4つ
(5)すべて誤っている
[問題10]個別分析に関する次のイからホまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
イ 対象不動産と代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度を把握するに当たっては、対象不動産の立地、規模、機能、周辺地域等に係る供給者の選好に留意すべきである。
ロ 鑑定評価手法の適用、試算価格又は試算賃料の調整等における各種の判断に当たっては、個別的要因の分析結果も反映すべきである
ハ 対象不動産と代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度を把握するに当たっては、対象不動産に係る引き合いの多寡に留意すべきである。
二 個別的要因により、対象不動産の市場価値が全般的に形成される。
ホ 対象不動産と代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度を把握するに当たっては、同一用途の不動産の供給の中心となっている価格帯及び主たる供給者の属性に留意すべきである。
(1)正しいものはない
(2)1つ
(3)2つ
(4)3つ
(5)4つ
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